ドラフト会議システムに見る、
システムの企画力と提案力。

同社は独立系の利点を生かした、柔軟で幅広いビジネスを展開。とくに同社の「システム提案力」には、ユーザーから高い評価が寄せられている。確かなシステム技術をベースにした「企画・提案力」を紹介しよう。

ドラフト会議の
もう一つの注目点

 毎年、多くの人々の注目を集めるドラフト会議。意中の球団に指名された選手、逆に指名されなかった選手など、いつものことながらそこには熱い視線が寄せられている。
 さて、そのドラフト会議の会場では、指名選手の名前がディスプレイに表示されている。何度もテレビに映し出されたのでご記憶の諸君も多いと思うが、そこには同社の名が記されていた。このドラフト会議システムの開発を行ったのが、同社なのである。それも単に「開発」がけをしたわけではないのだが、そのあたりは後で紹介するとして、まずは同社の全体像を知ってもらおう。

不況の今こそ、
強さを発揮する
独自のネットワーク技術

 同社が生まれたのは1970年のこと。どこの企業グループにも属さない「独立系」の情報システム企業として成長してきた。現在では、コンサルティング事業、アウトソーシング事業、マルチメディア事業、システム開発事業、ネットワーク事業まで幅広いビジネスを展開。しかも、金融から流通、製造、サービス、公共分野まで、あらゆる業界を幅広くカバーしている。
 同社は、長引く不況の下でも好調な業績をあげているが、その一つの理由として独立系の良さを生かし切っている点がある。独立系の特徴を簡単に言うなら、メーカーやユーザーなどの系列に属さず、使用する機種、システム分野、それに販売ルートなど、あらゆる面で制約がないこと。全く自由な立場なのである。
 そうした中で蓄積されてきたのが、フルラインアップのシステム技術力だ。そもそも企業の情報システムは、大型機・オフコンなどによる「基幹系システム」を中心に構築されてきた。大量処理を行うシステムである。そこに最近のトレンドである、EWSやPCをメインとした「業務系システム」が加わってきた。だが、これら2系統のシステムは基本的なアーキテクチャーが異なるために「つながり」が持てなかった。基幹系・業務系それぞれの情報を生かすために、両者を有機的な統合することが今、重要なテーマになっているのである。同社は、大型機からオフコン、クライアントサーバまで、あらゆる技術を対象にしてきた。統合が求められる時代だからこそ、より一層、同社の強みが発揮されるのである。
 一例を挙げると、20以上の系列校を有する専門学校グループのシステム構築がある。この顧客は、コミュニケーションやアート系の専門学校を東京・大阪・福岡、そして海外にも設けている。これまで分断していたシステムや情報を結合できないかというところからプロジェクトが始まった。ホストにIBMのオフコン・AS/400を用い、さらにウインドウズNTによるクライアントサーバシステムを構築。こうして、系列の各校を同一ネットワークシステムで一括運用することにより、事務処理の標準化や経営合理化を実現。系列校での受講や編入、オープンクラス開講といったサービス面の充実にも結びついている。

ワンランク上の
アウトソーサーをめざす

 「アウトソーシング」という言葉を聞いて、保守や運用の代行をイメージする人は多いと思う。確かにそれでも間違いとは言えないが、同社がめざしているアウトソーシングはもっと範囲が広く、レベルも高い。
 同社のアウトソーシングを話すときの好例が、冒頭で触れたドラフト会議システムである。まずシステムの概要に触れておこう。
 各球団が選択を行い、選手名を大型スクリーンに映し出す。ここまでは会場に持ち込まれたクライアントサーバシステムで行っている。さらに、会場のサーバとWebサーバとを結び、Web上で会議速報をリアルタイム中継した。日本で一番早い速報となり、ビジネスマンを中心として3時間に40万以上のアクセスがあったという。画面を見ながら放送したラジオ局もあったほどである。
 今ではすっかりお馴染みのシステムだが、その誕生はというと、同社が自らドラフト会議システムを企画し、日本野球機構に提案したことに発端がある。社会に受け入れられる企画を自社で作り上げ、顧客に対して積極的にアプローチする。展示会ブースの企画や会場づくりなどの運営面にもタッチし、広告代理店やイベント運営企業などとも連携していく。つまり、企画からプレゼンテーション、開発・制作・運営、そして運用・保守まで、すべて一括で行うことを同社ではアウトソーシングと呼んでいるのである。将来的にはメーカーやシンクタンクなどと手を結び、JVという形で展開していきたい考えだという。
 やや話が前後するが、同社には実に豊富なシステム構築実績がある。航空機操縦訓練用シミュレーション制御システム、Web上でのレンタカー予約システム、海運コンテナコスト管理システム、大手銀行の海外拠点における業務支援システム、さらにイントラネットシステムや営業支援CD-ROM作成まで多彩だ。また、国際的なシステム開発、あるいはJavaや電子商取引といった新しいトレンドにも積極的取り組んでいる。こうした開発実績と新しい技術への取り組み。同社流アウトソーシングの基礎になっていることも忘れてはならない。

自主重視の環境、
そして徹底した能力主義

 同社ほど徹底した能力主義を貫く情報システム企業は少ないかもしれない。技術系社員についてもフェアに、合理的に仕事や実績を評価し、業績に応じて年3回のインセンティブ支給も行っている。人事面では若手の抜てきもあり、逆に降格もある。それでいて、ギスギスした雰囲気がなく、後述するコミュニケーション教育の成果があり、暖かみのある社風が築かれている。
 こうした社内の雰囲気は、教育のポリシーによるところも大きい。同社では、コンピュータ技術の吸収だけに偏ることなく、各個人がコミュニケーション能力を身につけることを重視している。それは社内外との対人折衝能力であり、プロジェクト管理能力でもある。教育プログラムには、部下の指導育成能力に関するもの、自己主張や協調性に関するものまで用意されている。しかも、顧問の組織心理学者やコミュニケーション技術の専門家が、コミュニケーション教育プランの作成を行っていほど。 また、「システムコミュニケーション研究室」を設け、ソフトウェアを基盤としたコミュニケーション・ビジネスの研究や展開に着手。「企業内のコミュニケーション」「企業対企業のコミュニケーション」「企業と大衆とのコミュニケーション」を柱に活動を行っている。
 さまざまな事業を手がける企業だからこそ、同社には実に多彩な人材が集まっている。るSEやプログラマのほか、コピーライター、デザイナーもいる。スキルパスも、技術志向のエキスパートマネジャー、管理・営業指向のゼネラルマネジャーと、各人が自分に合った道を進んでいる。プロジェクトを結成する際も、部門の壁を越えてエキスパートたちを柔軟に配置し、最適なチームを作り上げていく。人を中心とした体制をとっていく会社だからこそ、コミュニケーションを大切に考えるのである。