当社の歴史がインターネットの歴史だった、
と言える軌跡、そして将来

インターネットの前身であるARPAnet。この構築で大きな役割を担ったのが、当社のミニコンだった。その後、世界最速のワークステーション「Alphaシリーズ」を核とした六四ビットコンピューティングなど、当社の技術は「オープン・ネットワーク・ソリューション」で大いに活躍している。同社の今後の戦略について紹介していこう。

ソリューションビジネス

日本国内におけるソルーションが日本当社の役割。97年を「新ITインフラ元年」と位置づけ、「ネットワーク・ビジネス・ソリューション」という事業戦略を打ち出している。

64ビット・コンピューティング

Alphaシリーズに搭載の世界最速64bit RISC Alphaチップ。業界で唯一、ハードからOS、アプリケーションまでの完全な64bitコンピューティング環境をサポートしている。

中核拠点

製品開発から製造を統合した技術&生産の中核拠点。モノづくりの基礎が整備されているからこそ、ソルーションに多大なパワーを投入できるのである。

インターネットの
基本を支えた当社の技術

 「ARPAnet」という言葉をご存じだろうか。一九六〇年代に米国で構想されていた異機種間の相互接続のためのコンピュータネットワークのことである。もっとわかりやすく言うなら、「インターネットのルーツ」だ。米国の四大学の間でパケット交換方式によるネットワークとして確立。その後、接続先を拡大し、インターネットの原型となっていった。実はこの「原型づくり」に大きく貢献したのが、当社のミニコンである。
 当社の創業者は「コンピュータはタイプライタのように実用的で身近な道具でなければならない」という設計思想を持ち、複数のミニコンをネットワークでつなぐ構想を描いていた。初めて開発した製品は価格も低く、小型で使いやすい、画期的な製品だった。
 ところでこの頃、「コンピュータ」と言えば、間違いなく「大型機」を意味した。「ネットワーク」は、「同一機種間の接続」のことだった。ただ、ARPAnetが狙っていたのは、当時は不可能とされていた「異機種間の接続」や「分散処理」だったのである。この点が、当社の設計思想と合致し、ARPAnetのノードのほとんどがPDPで構成されることになったのである。
 このように当社は、最初から高性能なミニコンで複合的なネットワークを築くことを前提としてきた。その思想を受け継いでいるのが、ワークステーション「Alphaシリーズ」だ。搭載されている六四ビットRISCチップは、業界で初めてワンチップで1BIPS(一秒間に一〇億回の命令実行回数)を実現。世界最高速のCPUとして高い評価を受けてきた。これをもとに、九五年にはインターネットで最大・最速の検索サービスを開始。九八年に出荷予定のチップでは、六〇〇MHzの高速動作を計画しているという。
 一方、ソフト面でも当社のノウハウは生きている。電子商取引や電子マネーの面でも当社は最前線を進んでおり、当社のネットワーク製品は、米国の政府機関でも活用されている。当社の技術とノウハウが、ARPAnetから三〇年近く経った現在のインターネットも大きく支えているわけである。

ネットワーク・
ビジネス・ソルーション、
日本当社の新戦略

 昨今のインターネットの急展開は、情報のあり方を変え、ビジネス分野におけるIT(インフォメーション・テクノロジ)にも大きな変化をもたらしている。日本当社の今後の戦略も、ネットワークの存在を強く意識したものになっている。同社の社長によれば、  「これまで、ITのパラダイムは、『特定のユーザに決まった情報処理システムを提供する』というものでした。これが『不特定多数のユーザが持っている、あらかじめ定義できない情報ニーズに応えなければならない』という時代に変わってきました。ビジネスにコンピュータが導入されてから三〇年ほどが経ちますが、それだけの歳月をかけて築き上げてきたハードやソフト、ネットワーク、アプリケーションといったインフラを、今後二~三年かけて新しいパラダイムへと移行させなければならないのです。その意味で、九七年は『新ITインフラ元年』だったと考えています。
 そうした中、当社では、『ネットワーク・ビジネス・ソルーション』という事業戦略を掲げています。ネットワーク技術を駆使した高度なソルーションを、パートナー企業とともに、お客様に提供。そして、対象とする事業領域としては、『六四ビットUNIX』『Windows NT』『インターネット』に焦点を合わせています。さらに対象マーケットを細かく絞り込み、それぞれの市場でリーダーの地位をめざしています」という。
 こうした戦略を推進する基本が、コネクティビティという考え方だ。今や、企業ユーザのシステム構成は複雑化しており、ベンダ各社が自社製品のことだけを考えるのではなく、協力し合って相互補完し、お客様にさらに大きなメリットを提供することが大切になってきている。九五年以来、M社との間で提携を結んでいるが、こうしたパートナーシップもコネクティビティの一環である。

教育・研修体制の
充実が示しているもの

 当社では、新人の技術者はまず三ヶ月間の集合研修を受ける。その後さらに配属先でのOJT教育が四ヶ月間あり、合計七か月間にわたってエンジニアとしての基礎を身につけていく。当社では米国の当社本社で開発・製造した製品の日本国内での販売・サービス、他社製品を含めたソリューションサービスを手がけている。ユーザが実際に情報システムを使っている場面に即した仕事であり、その対象はシステムのあらゆる構成機器、ハードウェア、プラットフォームに及んでいる。そのために、七ヶ月という期間は、最低限必要な時間なのである。新人の教育・研修に限らず、日本当社ではエンジニアの労働時間の一〇~一五%が研修にあてられているほど。年間数百種類のトレーニングが設けられ、最新の技術や情報を吸収する環境が整っている。
 また、インターネットの利用も活発で、現在、社内のWebユーザ・マシンは四万五千台。WWWサーバは一三〇〇台で、一〇〇万ページの情報を載せ、一ヶ月に五〇〇万通のメールが社内外で行き来している。このあたりの充実した環境にも、人を尊重する同社の企業理念がうかがえる。