煉瓦タイルの煙突と高い窓。
閑静な住宅街で、
お客様の夢を形にした設計と営業の話

自由設計の木造在来工法でポリシーを実践

 最上級の住まいを提供することをポリシーに掲げる当社。当社では、自由設計の木造注文住宅を、軸組工法という伝統的な技術で提供しています。つまり気の良さを最大限に生かしながら、それぞれのお客様のためにオリジナルの生活空間を創り上げていくところに、当社の最大の特徴があります。では、先輩たちはどのようにお客様の夢を形にしているのか。実例を通して社員の仕事を紹介していきましょう。

自由設計だからできた、
煉瓦タイルの煙突と高い窓、洋風の外観。

煉瓦タイルの煙突と高い窓
自由設計が光る住宅が完成

 東京都の閑静な住宅街。その中でひときわ目を引く洋風の住宅がある。当社で手がけたO邸である。外観は洋風ではあるが、構造的には在来の軸組工法。この伝統的な工法と、完全な自由設計を特徴にする当社ならではの住宅といえるだろう。お客様と営業はどのようにして出会ったのか。また、設計技術者は、お客様が持っていた夢をどのようにして実際の形にしていったのか。一つのケーススタディとして、当社の社員の仕事を紹介していきたい。

展示場で騒いでいた子供たちが
引き合わせたもの

 最初の出会いは展示場だった。その時の様子を、営業担当の小関修司は次のように振り返る。
 「確か、2年前のゴールデンウイークだったと思います。うちのモデルハウスで、子供さんが3人チョロチョロしていたんで、お父さんを呼んできてもらったんです。それがOさんとの出会いでしたね」
 そこでお客様のことについて初めて知る。同じ展示場内の8社のモデルハウスを見学し、しかも全社のアンケートに几帳面に記入していることがわかった。ただ、当社のモデルハウスを訪れた時点で、すでにお客様の気持ちは他メーカーにかなり傾いていた。そのため、当社を除く競合6社は、もはや積極的にはアプローチしなかった。
 「いろいろお話をさせていただいているうちに、お医者さんということがわかったんです。今までいろいろな職業の方とおつきあいさせていただいてまして、経験的に“お医者さんなら決断が早い”という直感が働いたんです。すぐに行動を起こせばなんとかなるかもしれないと思い、積極的にアプローチすることにしたんです」という。

最初にプレゼンしたプランで、
即OKをもらう

 ただ、お客様の気持ちはずっと他メーカーの仕様に傾いていた。プランの面で競合を突き放さなければお客様は納得しないだろう。だから、小関自身は、「社内でもナンバーワンの設計士にプランをつくらせる」という意気込みで商談に臨んでいった。そうした意気込みを受けて、O邸の設計を担当することになったのが、渡邉祐二(現・特建部次長)である。
 購入予定の土地の条件を調査し、一通りお客様の要望を聞く。そして自分の頭の中でプランを練ったあと、設計図と外観パースを作成し、プレゼンテーションを行った。細かなプランについては後述するとして、結果は、渡邉が出した第1回目のプランで即OKとなり、当社が受注に成功したのである。渡邉がつくりあげたプラン、決断が早いと見た小関の読み、2人の連携が受注に結びついたといっていいだろう。営業マン、設計士という職種の枠を超えて、お互いに喜びが分かち合える瞬間である。

T字の形状を生かし、
建物を引き立たせる

 「土地そのものはほぼ南向きで、100坪ほどの広さでした。まあ、条件的には恵まれているといっていいでしょうね。ただ、形はローマ字の“T”のようになっていて、ちょっと変わっている。南側から入って奥まったところに広い敷地がある。しかも、両側には隣家がせまっている。この土地の形状をうまく生かしたプランを立てなくてはならないと思いましたね」
 渡邉はそう振り返る。T字型の特徴を利用し、門扉から玄関までゆとりのアプローチを設ける。そして、奥まったところに建ってこそ、引き立つ外観デザイン。家づくりでは、土地条件に恵まれているケースのほうが少ない。土地の条件が良くないから良い設計ができない、というのは“逃げ”でしかない。土地の特徴をどう生かしていくかも、設計士の腕の見せどころなのである。
 なおかつ、渡邉自信は“1発でのOK”にこだわりを持っている。
 「設計士は全体のバランスを考えた上でプランをつくります。どこか1カ所が変更になると、どうしても全体バランスが崩れてしまう。もちろん建築技術上は何も問題なくきちんと建てられるわけですが、プランそのものには“ひずみ”が出てしまうこともあります。やり直しを繰り返すと不信感にもつながりますしね。だから、第1案でOKしてもらえるだけのプランをつくることが重要になるんです」という。

オリジナルの要望を採り入れる
オーダーメイドの真骨頂

 「プランに関してはほぼ奥様が対応していただきました。ご要望を要約すると、『リラックスできる住まい』『あとで直すことがない住まい』『豊富な収納スペース』ということでしたね」(渡邉)という。
 ダイニングには大きな窓があり、窓の外にはバーベキューパーティが楽しめるようなテラスが続いている。また、リビングには大理石を配した暖炉風の暖房があり、外観の煙突と併せてなごやかなイメージをかもし出している。ご主人の趣味を反映して、完全防音のオーディオルームもつくられている。小さな子供さんが4人いるため、子供室は将来、間仕切りで1人ずつ分けられるようなプランを採用している。
 そしてもう一つの要望として、海外からのお客様があるため、“和の空間をつくってほしい”ということがあった。また、奥様の趣味で茶室をつくり、独自の櫛形の障子欄間などを提案。さらに、そこから和の庭が続くようなプランを考えた。渡邉は、以前に本格的な茶室を設計したことがあり、とくに困ることはなかったという。

設計士の役割は、
お客様の“夢”を形にすること

 当社では、自由設計の注文住宅をメインに手がけている。そのため、形が決まった商品を大勢の人に大量販売するビジネスとは基本的に性格が異なる。
 渡邉の言葉を借りれば、
 「結局、設計の仕事は、図面を引くことではないんです。図面というのは一つの表現にしか過ぎない。お客様はこれから家を建てて、新しい生活のステージを手に入れて、という具合に“夢”を実現しようとしているんです。でも、お客様自身は設計士ではないので、夢はぼんやりとしたイメージでしかないんです。その夢をはっきりとさせ、家という形に表現していくこと。それが設計士の仕事」なのである。
 一人一人のお客様に対し、一つ一つの家をじっくり、こつこつと創り上げいていく。その結果として、お客様にも、社員にも、“夢”が残るのである。