70年にわたって伝統の味を受け継ぎ、
第2創業期を迎えた天ぷら専門店を
35歳の若き専務がリードしていく

 当社は大正13年に創業した老舗の天ぷら専門店。70年にわたる伝統を受け継ぎ、油、ネタ、衣にもこだわった本物の味を提供しています。現在まで東京を中心に30店舗を開設、天ぷら会席という新しいスタイルの店舗開発にも取り組んでいます。今後は、伝統の味を貫きながら、天ぷら専門店チェーンとして積極的な展開を図っていく計画で、会社としては第2創業期を迎えます。それだけに若手の活躍の場は限りなく広がっていきます。

今から70年前、
東京で生まれた味

 大正13年の東京。まだ、関東大震災の余波が色濃く残る、そんな時代に当社は誕生しました。創業者は、“常に最高の天ぷらを提供する”という厳しい姿勢を貫き、何よりも技術を尊び、熟達した技術を身につけてきた人物です。創業以後は天ぷら一筋に情熱を注ぎ込み、持ち前の頑固な職人気質によって当社の味をつくりあげてきました。こうして確立された味は、今日まで70年以上にわたって、老舗の伝統として受け継がれています。
 天ぷらは素材の味を包み込み、またお客様の前で調理するため、ごまかしが一切通用しない料理。ネタ、油、衣、そして揚げる職人の技量で決まるといわれています。そこで、当社では、新鮮で良質な素材を提供するために、魚介類は毎朝、築地市場から厳選したものを仕入れています。また、油は低温で焙煎された淡口極上で、色淡く匂いの弱い特注別あつらえの純正胡麻油を使用しています。こだわりを持った味が根強い支持を受け、今では多くのファンを開拓しています。

伝統の味を守る一方で、
天ぷらの新しい可能性を拓く

 当社の味は、現社長の手ではじめられたチェーン展開によって、より多くの人々に親しまれるようになりました。現在までに、東京都内を中心として30の店舗をオープン。“おいしさに真心こめて”というポリシーを貫く天ぷら料理の専門店チェーンとして、確かな基盤を確立しています。
 また、伝統の味を守り通し、さらにその味を深めていく一方で、天ぷらが持つ可能性についても熱心に追求しています。1991年には、一つの試みとして新宿本店近くに新店舗をオープンしました。これは、会席料理の合間に最高級の天ぷらを提供し、新しい味わいを発見していただこうというスタイルの店舗です。7階建てのビルの店内は、各フロアごとにインテリアの趣向を変え、お客様のお好みに合わせた空間を提供しています。
 このほか、1977年には日本で初めて“アイスクリームの天ぷら”を商品化。最近では“納豆のいなり揚げ”といったユニークなヒット商品も生み出すなど、次々と新しい試みを実行に移しています。

企業としての
基盤が整ってきた

 当社は今まで大学の新卒者の採用は行っていませんでした。というのも、伝統の味を受け継ぐ個人商店としての要素が強く、一つの企業として見た場合、エリアマネジャーや本部スタッフなどをめざす人材を受け入れるフィールドがまだ未発達だったんです。だから、あえて大卒の採用活動を行っていませんでした。それが、ここにきてチェーン展開が軌道に乗り、天ぷら料理の専門店チェーンとしての企業基盤が広がってきました。創業から70年にして企業としての組織や社内体制が確立するところまで来たわけで、そういう判断から今後は大卒の人材を採用していく決意をしました。97年4月に入社する人たち。そう、彼らが当社の大卒第1期生になるのです。

これからは
第2創業期

 今、当社は専門店チェーンとして新たな成長をめざす時期にあります。言い換えるなら、第2創業期を迎えているんです。分野とすると、天ぷらや和食という今までの延長線上を進んでいくことになりますが、事業の展開という言い方では、もっと広がりを持ってくるはずです。多店舗戦略を進めるかもしれないし、また新しい事業に取り組むチャンスがあるかもしれない。その前には、まず天ぷら専門店チェーンとしての足下もしっかりと固めていきたいですね。  当社は外食産業の中では、セントラルキッチンを持つような大手企業と、オーナーシェフが1人で頑張っているようなお店と、その中間に位置しています。つまり、伝統の味と企業としての要素、その2つの面を幅広く、バランスよく実現していかなければいけないポジショニングにあるんです。そういう意味では、本当に外食をやりたいという意欲を持った人には面白い会社だと思います。外食ビジネスに魅力を感じていて、確かな意志を持っている社員と一緒になって、第2創業期を頑張っていきたいのです。

2つのことを
勉強する

 前にも言ったように、当社には、伝統の味という部分とチェーン店としての部分と、2つの要素があります。社員には、この両方をバランスよく勉強してもらわなければいけません。ですから入社後は、まず店舗で調理やメニュー、店舗運営などを学んで、大卒の人なら入社してから4年後ぐらいには店長としてやっていくだけの能力を身につけてほしいと考えています。そして将来は、エリアマネジャーや本部スタッフとして、どんどん能力を発揮してほしいと思っています。
 私自身は、学生の頃からアルバイトでお店の仕事を手伝っていましたし、それこそ海老の皮を剥いたり、ホールでオーダーを取ったり、とにかくいろいろな仕事を経験しました。どの仕事でも共通しているのは、お客さんから「うまかったよ」「またくるよ」と言ってもらえたときなどに、確かな充実感が味わえるということです。つな八の味に満足してもらったり、あるいはつな八で天ぷらを食べるという行動そのものを楽しみにしてもらえたり、外食はいろいろな人に“満足”を提供できる仕事なのです。

人事制度には
とくに力を入れた

 あとは仕事に対する意欲を持続してもらうことを大切に考えています。お客様に満足してもらう喜びはあっても、職場や会社に魅力がなければ意欲は持続できないものです。たとえば、能力を最大限に発揮する場があり、発揮された能力や実績、努力などがきちんと評価される体制があるかどうかも大切です。この数年、社内体制の充実を図ってきましたが、中でも新たな人事制度の確立には力を入れています。今後は、能力の基準を明確にし、それぞれの等級で必要とされる能力、これから身につけるべき能力などがわかるような体制をスタートさせていきます。ただ、サービスの質やお客様の満足度は客観的な数字になりにくいので、表面的な数字だけの評価体制にするのではなく、人間っぽさも含んだ体制にしていく計画です。とにかく、やればやっただけのものが返ってくる。そんな評価体制をめざしています。ほかにも、CSプロジェクトというのを推進し、お客様の満足向上のために、もう一度原点に帰ってつな八の基本を考え直しています。これもすべて、第2創業期の成長をめざすための布石なのです。