それぞれの社員に浸透した
「WILL」という精神が、
当社という会社を進化させていく。

アミューズメントからエンターティンメントへ

 アミューズメントスペースの企画・運営を中核に、業務用ゲーム機の開発、家庭用ゲームソフトの開発まで、同社は3つの事業の柱を持つ総合アミューズメント企業である。社内では、「WILL」という企業方針のもと、社員が自ら進んで提案し、仕事に取り組むという風土が浸透。とくに20代の若手社員の積極性が目につく。今後は、アミューズメントからエンターティンメントへの進展をめざしており、これからの展開にも注目したい。

ネームクラブ入れましょう

 ここは、総勢60名ほどのメンバーを抱える大規模ロケーション。ロケーションでの社員の仕事は、アルバイトの管理や教育、売上管理、資産管理、景品担当などが中心になるが、その中で主に資産関係の仕事を担当しているのが、彼である。
 「資産とは主に店舗のゲーム機のことで、その導入から見極め、入れ替え、メンテナンスまでさまざまな業務を担当します」
 ゲーム機一つ一つの売上データから収益性を判断し、それを事業所に報告する。そして、他店に移したり、新しいゲーム機を導入したり、という動きが出てくるわけだ。
 「たとえば、新製品を導入するとはじめは好調な売上を示しますが、ある時期を過ぎるとどうしても下降気味になります。そこで、その製品を使ったトーナメント大会のようなイベントを開催すると、売上が復活することもあるんです。また、戦闘ゲームは別個においたり、通信でつなげて対戦台にしたり、設置の仕方一つで売上が変わってきます。お客様に楽しんでもらいながら、同時に売上も確保する。そのバランスが難しいですね」という。
 彼がこれまでに手がけた例として、『ネームクラブ』があげられる。『ネームクラブ』の人気を知った彼は、『ネームクラブを新たに導入し、すでにあるプリントクラブと並べてみたらどうか』と考えた。さっそく店長に提案してみる。店長を通じてロケーションを統括する事業所にこの話が持ちかけられ、数週間後にはネームクラブが届いた。
 とにかく、やるからには成功させたい。『ネームクラブの名刺にプリクラのシールを貼って、名刺交換しましょう』というコンセプトでお客様に提案。2台の機械の横には、名刺を貼ってもらうスペースを設けてPRをする。その結果、2台のゲーム機の相乗効果によって、売上が大きく上がったのである。
 「当社にはWILLという考え方があり、新人でもかなりやりたいことができます。全然人が集まらずに失敗を終わったアイデアもありますが、今のうちにたくさんの経験をしておこうと考えています」

音量をもう少し下げてみてください

 営業一部営業統括課の彼女は、学生時代にほとんどゲームをしたことがないという異色の人物だ。「人々に楽しんでもらう仕事、快適さを提供する仕事」に興味を持ち、その中の一つに当社があった。
 「アミューズメント産業はまだまだ成熟し切っていない業界なので、自分の力で業界を変えていけるチャンスがあるはずです。そのためにはゲームを知らない人間だからこそできることも多いかもしれないと考えたんです。入社してからもずっと『ゲームに詳しくない人の視点で』というモットーは変えていないですね」という。
 彼女が現在所属する営業統括課とは、ロケーションの管理・統括を行うセクション。営業一部は主に神奈川、東京、甲信越エリアを担当している。その業務は幅が広く、売上や予算の管理、資産の運用、景品関係のとりまとめ、販促イベントやPOPの作成などまで、ロケーションをバックアップするありとあらゆる業務を手がけている。時期によってメインの仕事は異なるが、彼女も一通りの業務を経験している。
 「95年10月からは、ロケーションの診断業務が加わりまして、今はこれをメインに担当しています。事業所長と一緒に各地のロケーションを回り、数10項目のポイントをチェックします。店内のレイアウトやゲーム音量など、運営状況を把握し、改善点をアドバイスしていきます」
 当社では女性客や、これまでゲームをしなかった人たちも取り込みつつある。そんな時期にあるからこそ、彼女の新鮮な感覚が返って役に立つ。
 「中には必要以上のゲーム音量、BGM音量を出しているロケーションもあるんです。もう少し音を下げてくださいといっても、これまでの常識からなかなかを納得してくれない店長さんもいます。そこで、一生懸命に説明するんですが、そういうときには、今の自分の仕事が単にロケーションの診断や改善ではなく、ロケーションスタッフの意識改革という大きなところにあるんだなということを痛感しますね」

ポストペイドならうまくいくかも

 「私たちの仕事は調査したり企画したりするだけではダメで、その企画をどうやって実行し、軌道に乗せていくかが大切なんです。むしろ、そこで手腕が試されるんです」
 これは、営業政策室の彼の言葉だ。営業政策室は、全国430のロケーションの管理運営、店舗開発、新規形態の開発などを行っている。全社的な立場でロケーションを導いていく部門。彼が最近手がけたものに、ポストペイドシステムがある。
 「ゲーム機は50円、100円という単位で、細かな料金設定ができなかった。ゲーム機から硬貨を回収する作業も大変で、お客様にも社員にもメリットがある仕組みに変えたかったんです。でも、先払いのプリペイドカードはアミューズメントの性格になじまない。それならば後払いでと、ポストペイドシステムを考えたんです。磁気カードを先にお渡しし、カードを挿入してゲームをする。カードの裏には使った分が印字され、帰る前に清算するという方式です」
 企画書を提出してからシステムづくり、社内調整などで1年を費やした96年10月、ようやく厚木店での試験導入にたどり着く。導入初日は彼も店内でお客様の反応を探った。彼の不安をよそに、お客様は不思議なほど、違和感なくポストペイドカードに順応してくれている。利便性を追求したものの、厚木店は1カ月後には売上もアップしていた。成功である。そして、97年度中には50店舗に導入することになった。今後は、クレジットカードでの清算も導入予定。一方では、ポストペイドシステムをホテルなど他業界に向けて販売する新事業まで生み出している。
 もう一つ、彼が企画したものがある。顧客情報や市場動向をつかむために、店舗から情報やアイデアを収集するシステム。発信者が宛先部署を指定し、そのままダイレクトに届く点に特徴がある。
 「どうみても使えない情報もあえて流す。情報を発信することが大切で、その判断は受け手が考えればいいというコンセプトなんです」
 95年9月の導入当初は月20件ほどだったものが、現在では300件ほどに。そしてロケーション以外の社員も参加する一大情報網となっている。