これで世の中のために何かできそうだ。
自動認識技術で社会に貢献しよう、と
真剣に考え始めた技術集団の話です。

バーコードリーダーの技術をもとに、
自動認識の可能性を追求

 企業の中ではコンピュータが激増し、巨大な情報システムが築かれている。当然、膨大な量の情報が社内を錯綜し、それだけに「リアルタイム」で「一括管理」しなければ有効な情報が得られない状況にもある。その解決策として、あらゆる産業界に浸透しているのがバーコードシステムである。当社は、このバーコードを産業界に持ち込んだ研究・開発型のメーカー。持ち前の自動認識の技術によって、新たな可能性を広げている。

バーコードリーダー

 バーコード=コンビニ。そんな連想をする人が多いだろう。それほど生活の場に浸透したバーコードだが、実はメーカーの生産工場でも盛んに使われているのだ。たとえば資材の受け入れに始まり、組立、加工、在庫管理、物流まで。情報の「一括管理」と「リアルタイム処理」が得意なバーコードは、企業のコンピュータシステムの重要な構成要素として活躍しているのである。このバーコードを正確に素早く読み取り、情報をコンピュータに伝送する装置。つまりバーコードリーダーを開発するのが当社の仕事だ。外見はレーザーを出す箱にしか見えないが、中には当社がこれまでに開発してきた数々の技術が盛り込まれている。
 日夜その技術に取り組んでいるのが、約30名の技術者たち。バーコードリーダーはもちろん、画像処理の技術を駆使した2次元コードや、物質の内部の状況を安全に正確に見抜く軟X線装置まで。自動認識というテーマを追い、新しい技術を次々と生み出している。バーコードリーダーでいえば、その技術は光学系、アナログ・デジタルの回路技術、ソフトウェア、そしてメカという要素で成り立っている。それでは、バーコードリーダーの核となっている技術について紹介してこう。

光学系ユニット

 バーコードリーダーの仕事は、レーザーをバーコードに向けて照射し、反射光を受けるということから始まる。まず、半導体レーザー・ユニットで発生させたビームを投光。これを回転する10角形ミラーのポリゴンモーターで反射させて、ビームを振りながらバーコードにあてる。500回/秒という速さでバーコードを縦方向にスキャンした後、反射光を光学レンズで集光し、今度はそれをフォトダイオードが受光。ここで電気信号へと変換し、アナログ波形データを得る仕組みになっている。小型化すればフォトダイオードの受光面積が小さくなり、受光精度は確実に低下する。とはいえ、反射光を受け取らなければ、何も始まらない。バーコードの情報を入手して電気回路へと渡すための核となる、重要な部分なのである。

アナログ回路設計

 フォトダイオードから得られるのはアナログ波形で、電気信号としては非常に微弱なものである。これではとても、処理部分にデータを渡せない。しかも、バーコードシールについている汚れやゴミまでがノイズとして取り込まれ、太いコード・細いコードというそれぞれの波形データの間に細すぎる波形が混じっていたりする。このままデジタル変換すると、正確なデータが得られなくなってしまう。そこで活躍するのが、信号を増幅したり、ノイズを除去したり、という役目を果たすアナログ回路である。ノイズフィルターの部分の機能は、基板上ではほんの2cm角のスペースの中で実現されている。基板全体でいうと、小型バーコードリーダーでは、デジタル基板、アナログ基板、インターフェイス基板、PD(フォトディテクタ)基板の4枚構成にして、小さなスペースをうまく利用したり、製品の小型化のために電気回路は頑張っているのである。

パターン認識

 たとえばリーダーが実際に設置されている生産ライン。バーコードついた品物がいつも同じ方向・同じ角度を向いて、リーダーの同じ位置に流れてくるとは限らない。バーコードを一定方向に読むものをシングルスキャンと呼んでいる。これに対し、バーコードがどんな角度で入ってきても認識できるのがマルチスキャンの「全方向バーコードリーダー」である。これはシングルスキャンでも言えることなのだが、一度のスキャンで完璧な読み取りができない場合、補正機能が必要になってくる。その機能をハードに持たせると回路が巨大化する。そこでソフト的に補正するプログラムが搭載されてる。そこには独自に確立した推論アルゴリズムがあり、部分的に読み取ったデータをメモリに保存。同じパターンがあれば重ね合わせ、違うパターンを結合していく。そうして、一つのコードとして全体像を再構築し、正しく認識していくわけである。プログラムはアセンブラやCで書かれるが、処理スピードが求められるため、高速に実行させるためのプログラミング技術も駆使されている。

デジタル回路設計

 全方向バーコードリーダーのハイエンド製品では、スキャンがより高速になっている。また、補正プログラムなどのデータ処理をより高速に実行していくために、ハードウェアの性能アップが求められている。高速な動作の基礎となるのが、デジタル回路である。そうした目的のために、FPGA(Field Proram Gate Arey)が使われている製品もある。FPGAとは、回路記述言語を使って回路の中身が自由にプログラムでき、市販のICにはない独自の機能を盛り込めるセミカスタムのICである。通常、スキャンが遅い製品では、バーコードの幅の判断はCPUが行うのだが、高速スキャンの場合はダイレクトな判断ができなくなる。そこで、FPGAが判断してデータを一旦メモリに蓄積し、CPUへと渡していく。一種の並列処理が成され、これによって高速での処理を実現しているのである。より高速なコンピュータへのデータ伝送が求まれる中、FPGAやカスタムICなどを使ったデジタル回路の設計はさらに増えていくはずである。

画像認識技術

 さて、はじめは単品管理を目的に生まれたバーコードにも、新たなニーズが出現している。まず一つがもっとたくさんの情報量を持たせたいということ。一般的なサイズのバーコードでは容量が足りないという声だ。そしてもう一つが、たとえばLSIのチップのように、小さな場所にバーコードを貼りたいというニーズだ。2つのニーズに応えるものとして期待を集めているのが、2次元コードである。およそ3cm角のスペースに、1次元バーコードの何10倍もの情報が盛り込める。ユーザーとしては確かにメリットは大きい。逆に言うと、読み取り、認識が従来の技術では難しくなり、今までとは異なる新技術が必要になってくるのだ。2次元コードは、半導体レーザーを使った光学系ユニットに代わって、直接CCDでコードを読み取り、画像データとして処理していくという方式である。微細な画像を瞬時に読み取り、またCCDの誤差を補正する。高度な画像処理技術を核にした製品といえよう。当社では、いち早く2次元コードリーダーの技術に取り組み、次世代製品の開発を進めている。

軟X線検査装置

 バーコードリーダーは、品物の表面にプリントされたコードを自動認識する製品である。いわば、目に見えるものである。さらに、目に見えない部分、たとえば物質の中身までを自動認識するような技術も求められるようになってきた。それを実現したのが、軟X線検査装置である。軟X線はレントゲンなどのX線よりもはるかに波長が長く、人体への影響がきわめて少ない。だからこそ当社が取り組みはじめたわけで、すでにリチウムイオン電池、食品などの高速な透過試験に使われている。また、軟X線は露光時間が長く、今までは静止しているものしか検査できなかった。だが、当社では、独自の技術によって軟X線で“動いているもの”をとらえることに成功。自動認識の新たな可能性を大きく広げた製品であり、各方面の企業から注目を集めている。