生産する、販売するという一連の企業活動の中では、製品や原材料などを保管、移動、包装といった業務が必要になる。これらの物流業務を付随的に行うのではなく、初めから全社的な経営効率化の主要テーマとしてとらえた戦略的な物流のことをロジスティックスと呼ぶ。



計画する。会社グループのロジスティックスを考える

多彩な製品群の物流をトータルに企画・管理する企業

 最近よく耳にする“ロジスティックス”という言葉。日本では“戦略物流”と訳され、今や企業経営の重要テーマになっています。工場でモノをつくり、販売するという一連のプロセスの中では、どうしてもモノを動かすことが必要になります。どんなに優れた製品を開発し、強力な営業力を発揮しても、物流の仕組みがしっかりしていなければ企業活動は成り立ちません。逆に、確実に、安全に、速く、低コストでモノを動かす仕組みがあれば、収益性が向上し、製品価格の低下にもつながり、市場での競争力アップに結びついていくのです。そこで、単にモノを移動させるという考え方ではなく、企業活動をトータルにとらえ、より強い企業集団になるために戦略的な物流システムをつくりあげていく。それが“ロジスティックス”であり、FFL(会社ロジスティックス)はそうした重要な役割を担っている会社なのです。

 会社グループの製品アイテムは、数万点にものぼります。各種の写真フイルムや“写ルンです”、カメラをはじめ、AXIAのオーディオテープやビデオテープ、会社のOA機器など、グループ企業が生産する多種多様な製品の物流をFFLが一手に担当しています。しかも、フイルムなら温度や有効期限などの厳密な管理が必要です。磁気製品や精密機器は湿気を嫌い、衝撃や振動などの影響を受けやすい製品です。また写ルンですのように、再利用できる資源を回収している製品もあり、モノの流れとその管理はとても複雑になっています。それだけに、どんなフォーメーションでどういう風にモノを流すか、という計画が大切になのです。FFLでは社員1人1人が知恵を絞り、より効果的な物流の仕組みづくりをめざしています。 東京・港区の本社を中心として、工場地区に4カ所、営業地区に10カ所の事業所を構え、グループの物流をトータルにコントロールしています

運ぶ。保管する。 製品を造り、売る。両者の最適点を提案する

工場と営業を結びつける物流が、経営の効率化を実現する時代

 そもそも物流とは、いろいろなモノをいろいろな場所に動かすことです。ただし、FFLは1台のトラックも、1つの倉庫も所有していません。実際に製品を運んだり、倉庫に保管するのは外部の輸送会社や倉庫会社など。FFLのメインの業務は、物流の全体的な仕組みを考えたり、効率化のための企画・提案をしたり、また物流に必要な情報システムを開発したりすることなのです。

 たとえば現在は、会社グループの工場地区に4カ所、また各営業エリアに10カ所の事業所を設けています。各工場で製品ができあがると、まずは1次倉庫と呼ばれる主要拠点へ引き取られ、保管されます。ここから各営業エリアの倉庫へと運ばれ、さらに商社や販売店などのお客様へと届けられていきます。発送量や配送先、倉庫の在庫は受注状況に応じて変化していきますから、グループ各社の営業部門や協力会社と密接に連携をとりながら、タイムリーな形で輸送や保管の段取りを組んでいくのです。その過程では、コンピュータシステムから最新の情報を得ながら、コンテナや配送車を手配し、配送する製品の優先順位なども的確に判断していきます。一方で、将来的な物流効率化にも目を向け、問題点を見つけ出し、より有効な物流システムを実現するための企画・提案を実施していきます。

 そしてもうひとつ、重要なテーマに取り組んでいます。FFLは工場と営業部門の両方と密接な連携を保っています。工場だけ、営業だけの効率化ではなく、グループ全体にとってメリットの高い生産や営業の体制をつくりあげていくために、“運ぶ”“保管する”という切り口からグループの経営効率化を考えていくポジショニングにあるのです。 最適な形に物流をコントロールするために欠かせない物流情報システム。その企画・設計と開発もFFLの大切な業務です



包む。 包装技術と呼ばれる、物流の技術領域がある

包装技術と資材に関するノウハウを豊富に蓄積

 ロジスティックスという観点から物流を考えるとき、製品の“包装”も欠かすことのできない要素になってきます。とくに海外各国への製品輸送では、少ない包装材料で長距離の海上輸送から製品を保護し、船積み作業を合理化していくために、新しい包装技術へのアプローチが必要なのです。そこで、FFLでは自社内に包装技術部を設け、専門の技術者による設計や研究活動に取り組んでいます。設計には先進のCADシステムをフル活用し、独自のスペックに基づいた包装を実施しています。また、包装に関する技術の追求を目的とした包装試験室もあり、国内に3台しかないと言われている高性能な振動試験機を導入。高周波によるハイレベルなシミュレーションを行うとともに、振動だけでなく、温度や湿度、衝撃など、海上輸送時に起こりうる様々ななファクターを想定したテストを繰り返しています。同時に、実際に使用されている各種の包装資材の性能テストも積極的に行っており、包装技術や資材に関するノウハウを総合的に蓄積しています。そして、これらの試験によって得られたデータは他社にも開放し、物流業界全体の包装技術向上に大きく貢献しています。

 さらに、積載効率の向上という観点から、1993年には「シートパレット」と呼ばれる薄型の海上コンテナ用パレットを開発しました。これにより、コンテナの省スペース化を図り、積載効率の大幅に向上させることに成功。海外輸送における物流コストの低下へと結びつけています。このほか、海上コンテナの包装で使用した資材のうち、回収できるものはすべて回収。リサイクル資材として繰り返し使用することで、省資源化を果たすなど、地球環境にも十分に配慮した活動を進めています。 国内に3台しかない振動試験機を活用し、さまざまな実験を行っています。また試験から得られたデータは他社に開放しています。



輸出する。 海外130カ国に製品を届ける情報力とノウハウ

グローバルに物流を考える時代へ

 会社グループの製品は、海外130カ国以上の国々に輸出されています。輸出に伴う物流業務もFFLが担う大切な役割です。海外からオーダーされた製品は、海上コンテナのタイムリーな手配や適切な船積みの指示といった物流コーディネイト、あるいはLC(船荷証券)をはじめとする書類作成や諸手続きなどを経て、各国へと届けられていきます。その輸出先は多岐にわたり、欧米のように日本からの基幹的な航路となっている地域のほか、南米やアフリカなど輸送量が少ない地域へも製品を供給しています。しかも厳しい品質管理が必要とされる製品が主体ですから、情報力や国際物流のノウハウがあって初めて効率的な物流が可能になるのです。

 また最近では、国際化の進展によって、物流もグローバルに考えていく時代が訪れています。従来は各国のそれぞれの代理店に向けて海上コンテナを設定していましたが、1993年にはヨーロッパにデリバリーセンターを開設。デリバリーセンターまでは一つのコンテナで同梱し、その後各代理店に向けて製品を小分けして輸送するという手法を採り入れています。新しい物流体制は、海上運賃の削減という成果を生み出しています。

 さらに、生産拠点の海外進出はますます活発化しています。すでに、インドネシアで生産した製品をシンガポールの配送センターで保管し、そこから海外各国へ輸出するという多国間にわたる物流も積極的に行われています。こうした国際的な物流体制の確立に際してもFFLのノウハウが生かされています。また、1995年には印画紙製造を行う会社のアメリカ工場が稼働する予定で、FFLでも国際的な物流のノウハウを発揮しようとしています。 海外での生産活動が活発化し、他国間でモノが動くケースが急増中。グローバルに物流を考えるノウハウを発揮する時代が訪れています。



1人1人の頭脳が経営資源

これまで紹介してきたように、FFLにはトラックや倉庫といった“ハードウエア”はありません。 効率的な物流を実現していくために、 総勢200名の社員がそれぞれのセクションで知恵を絞り、 そこから生まれたアイデアが、 FFLと会社グループを成長させていくのです・

国際化が進む中での物流システムづくり

 シッピング事業部は、船積みや輸出に関するコーディネイトや書類作成、銀行対応などを行っています。私は北米グループに所属し、アメリカ、カナダへの物流を担当しています。北米は日本からの物量が非常に多いだけに、ちょっとしたアイデアが、年間で1000万円ぐらいの合理化を実現することもあります。またシッピング事業部では1994年に、会社との共同で「EPSILON」という物流システムを開発しました。これは船積みや輸出のための書類作成などを支援するシステム。輸送時期が近づくと出庫・包装などの指示が自動で出るようになり、間違いも少なくなりました。このほか社内には提案制度があり、シッピング事業部では提案件数で部門表彰も受けましたし、部内には個人表彰を受けた人もいます。物流がますます国際化していく中、新しい物流システムづくりにつながる提案をしていきたいと考えています。 シッピング事業部

全社統括的な情報システムを構築する

 業務部の役割は、大きく分けて2つあります。ひとつは将来に向けた会社のビジョンを企画・提案していくこと。そしてもうひとつが、ビジョンを実現していくために必要なコンピュータシステムを開発していくことです。とくに最近のように物流の効率化が叫ばれる中では、システム的な整備が欠かせません。国内の各拠点を結ぶオンラインシステムから、在庫管理や自動配車システム、包装設計のためのCADシステムや包装資材の購買管理システムなどまで、今や物流というビジネスは様々な情報システムの活用によって成り立っているのです。また現在は、全社を統括する情報システムの開発を進めています。各拠点をまわり、実際にシステムのユーザーとなる社員からニーズを収集。どのようなシステムを構築すれば効率化が果たせるかを考え、情報化という側面から新しい物流の仕組みをつくろうとしています。

会社グループの中核的な物流拠点

 小田原営業所は、会社グループの主要な生産拠点である小田原工場・足柄工場と連携した物流拠点。FFLの事業所の中でも中核的な位置づけにあります。また感圧紙を除けば、海外生産された製品も含めてグループ各社のすべての製品を取り扱っています。営業所の業務は、輸送グループと保管を担当する製品グループに大別されます。24時間稼働で生産される製品を保管し、営業部門のオーダーに基づいて各地へ配送していくわけですが、配車や在庫などのたくさんの情報を収集し、自分のアイデアや判断によって加工し、保管や配送を指示・計画していきます。もちろん協力会社に対する提案も大切な仕事です。どうすれば少ないスペースで多くの製品を保管できるか、もっと効率的な配送はできないのか。いわば私たちは司令塔であり、協力会社をリードして、物流合理化を進めていく立場にもあるのです。