建設省、日本道路公団、
住宅・都市整備公団を取引先にする、
土木関係の建設コンサルタント企業

 当社は1972年に設立した土木関連の建設コンサルタント企業。調査、設計・計画などを主要な業務にしています。設立以来、建設省、日本道路公団、住宅・都市整備公団を主な取引先に安定した経営を展開し、しかも元請けとして数多くのビッグプロジェクトに関わってきました。社内では、およそ100坪の設計ルームをほぼ20名の設計技術者で使用するなど、社員がゆとりを持って仕事をしていける環境を整備しています。

8年間という長期にわたる仕事

 北関東自動車道。放射線状に広がる東北縦貫自動車道、関越自動車道などを結ぶ高速道路である。当社では、1983年から1991年までの8年間にわたってこの計画に参加。主としてルート選定に携わった。
 北関東自動車道は、群馬・栃木・茨城の3県にまたがり、前橋・高崎から宇都宮を経由し、水戸・日立まで延びる。全長は約150km。当社が担当したのは栃木県全域で、距離はおよそ72kmになる。
 ルート選定で行う調査は、計画線調査、地質調査、関連公共事業、重要構造調査、経済調査、環境調査まで多岐にわたる。はじめは5000分の1の地形図をもとにして、綿密な現地調査を進めていく。栃木県はハイテク産業の研究所や工場が立ち並ぶ地域で、宇都宮テクノポリス、大規模な工業団地が多数存在している。1日の推定交通量はおよそ23〜33万台で、北関東自動車道には産業道路的なイメージが出てくる。このあたりは、各産業地区へのアクセスを考慮したインターチェンジ設定などに大きく関わってくる。
 また、産業とともに豊かな自然環境を有する地域でもあり、山岳地の景観への配慮も欠かせない。公園や住宅団地、学校などへの影響を最小限に抑え、神社仏閣、墓地、遺跡といった重要建造物を極力を避ける。同時に工事費や施工性も考えていかなければならない。もちろん各市町村ごとに都市計画があるから、これらを調査した上で地元の要望も盛り込んでいく。このようにルート選定には知識やノウハウとともに、検討・見直しを繰り返す地道な作業が必要になってくるのである。
 一方、約13.7kmにわたって東北縦貫自動車道と重複して走る部分がある。この部分は将来的に交通量が増大した際に、現在の6車線から8車線へと拡幅する構想も打ち出されている。当社では、施工上の技術的な問題から用地確保、施工時における周辺への影響などまで、拡幅の検討も担当している。

ジョイント部分に生かされたアイデア

 千葉県成東町。千葉東金道路(国道126号線)の延長部分、JR総武本線・成東酒酒井線と交差する位置に長さ約620mのコンクリート高架橋を建設していく。これが本郷矢部高架橋の建設計画である。当社では、このうち約270mの区間の設計業務を行った。
 設計上の配慮を示す例は、一つにはジョイント部分にある。施工場所に地盤の弱い部分・強い部分があると、通常の設計では強い箇所に設けられた橋脚にすべての負荷がかかってしまう。1カ所だけに負荷が集中すれば、構造的にもバランスが悪くなる。そのため、これまで日本道路公団ではあまり使われていなかったという、某メーカーの特許技術の「ゴム沓」を使うことになった。これは水平力の分散沓といわれるもの。特殊なゴムの柔軟性をうまく利用することで、各橋脚に負荷を均等に分担させることができる。そうすれば橋脚の太さや幅を均等化することが可能で、外観的なバランスも良くなるというわけだ。
 また、コンクリート橋は乾燥後にどうしても縮小する。柔軟に変形するゴム沓をあらかじめ逆方向に曲げておき、乾燥後には縮んだコンクリートに引っ張られて、真っ直ぐにするという工夫もなされている。
 同時に、ジョイントをできる限る少なくする設計を施した。ジョイントは、走行時の騒音の原因にもなり、走行性にも大きく影響する。それに耐久性といった面でも課題が多く、完成後には補修をする機会も多くなる。その際には工事による渋滞も避けられない。そこで多少は建設時にコストがかかっても、完成後のメンテナンスを軽減しようという考え方が貫かれたのである。
 さらに意匠的な面でも新しい試みがあった。桁、橋脚の柱にサークルを付けて丸みを持たせた。今までコンクリート構造物は直線的で角張ったイメージがあったが、女性的な柔らかさを持たせた流線形のデザインになっている。

6種類の橋をプレゼンテーション

 当社では、住宅に関連した業務も手がけている。現在、首都圏では様々な大型の住宅地が建設されている。その一つである千葉県千原台地区。当社ではここに設置される歩道橋の設計を行った。
 施主である住宅・都市整備公団から当社に話が寄せられてきたのは、1992年のこと。千原台地区には全体的な基本計画があり、地区内にはD1〜D5までの5つの橋が計画されている。依頼されたのは仮称D1橋と呼ばれているもので、地区への出入口となる部分。ゲート的な意味あいも持っているため、デザイン的にもシンボリックなものが要求された。最近は公団住宅でも、デザイン面を重視した住宅や周辺環境が増えているのだ。
 まずは現場に足を運び、遠くから立地を眺めたり、逆に橋が架けられる位置から写真を撮影したりと、全体的なイメージをつかむことからスタートした。その後、主に構造的な要素に基づいて6種類の案をプレゼンテーションした。それぞれのコストや施工性、メンテナンス性、あるいは景観などのデザイン性までを紹介していく。さらにディスカッションを経て3種類に絞られた。
 こうして3案の具体的なデザイン案をパースによって提示。同時にそれぞれの橋のメリット、デメリット、見積もりなどをプレゼンテーションしていった。最終的に一つの案に決定したのだが、すべての設計が終わったのは1993年で、ほぼ1年がかりでの設計・提案活動となった。
 このほか、当社としては周辺環境にも配慮を払っていった。千原台地区はファミリー用の住宅地区であり、近くには小学校もあるから、当然子供が多い。そこで自然と子供が橋に集まってくるようなイメージ、橋の上で子供が遊びに来るようなデザインを重視した。そして、タイルで昆虫や動物の絵柄をつけたり、また橋の手摺部分にも昆虫や動物のパネルを設置するアイデアを提案したのである。この提案には強い関心が示されており、この先、実際に施工された時にはこうしたアイデアが生かされた「子供に人気の楽しい橋」が出来上がるはずである。