ASIC、マイコンシステムの
設計・開発を中心に展開する未来戦略企業

 当社は1983年に設立。S社半導体部門の未来戦略を担う技術集団として生まれた。オーディオ&ビジュアル分野を中心としたASIC設計、マイコンシステム開発を主業務に展開。とくにユーザーの企画構想段階から密接に関わっていくところに同社の特徴がある。すでにユーザーは親会社以外の企業にも拡大。半導体分野はさらに技術を高め、重要度を増していく要素技術だけに、同社の今後の動きに注目したい。

LSI設計、という世界

 もはや社会に欠かせないものとして、LSI本体も見慣れた存在になってきている。が、そのプロセス、とくに設計プロセスはあまり知られていないかもしれない。要は小さなチップの中に盛り込まれる回路を設計するわけで、基本的にLSI設計はAV機器などの最終製品で実現する仕様をもとに、LSI化すべき機能を決めるところから始まる。そして、その機能をLSI上で、どんなスペックで実現していくかを決め、詳細設計、レイアウト設計へと展開する。さらに綿密な試験や検証を経てまとめられた回路図をもとに、製造工程へと移っていくのである。  当社はその社名通り、こうしたLSIの設計・開発を主業務にしている企業である。

Intelligence on Chips
技術を核にした社会への提案

 当社では“Intelligence on Chips”と呼ばれる企業理念を掲げている。これは、ASIC(特定用途向けIC)をはじめとするLSI、マイコンアプリケーションシステムの設計・開発活動において、“半導体チップの能力を最大限に引き出し、そこに知能を与えていこう”という考え方である。実際にASICやマイコンシステムを商品化していくためには、ハード・ソフト双方の技術者が一体となり、お互いの技術ノウハウを結集しながら開発を進めていくことが大切になる。その結果として生み出される高度な技術力、あるいは斬新なアイデアや独創性を、半導体チップという舞台で展開していこうと考えているのである。
 LSIやマイコンシステムは、先端的な技術を使いやすい形で人々に提供していくという点で、非常に優れた分野といえる。高集積化・高機能化を図ると同時に、小型化や低価格化といったファクターも加わったため、今までには想像もつかなかった製品を産業界や日常生活の領域に提供してきたのである。ほんの7mm角の小さなLSIの中に、自分たちの技術や意志を盛り込み、社会に対して新しい提案をしていく。そんな技術者の夢を実現していくチャンスに満ちた世界なのである。

中枢の技術
LSIが製品の性能を左右する

 AV機器や電子機器などの最終製品の中で、LSIが心臓部としての機能を果たしていることはいうまでもない。CD、MD、DATなどのデジタルオーディオを気軽に楽しめるようになったのも、高性能な信号処理を行うLSIが開発されたためといえる。また、ビデオカメラが一般家庭に普及した背景にも、豊富な機能をコンパクトな中に集約し、低価格化を実現したLSI技術が見逃せない。もちろん、今後本格的に発展するであろう機器やシステム、たとえば次世代カーナビゲーションシステム、携帯電話などのパーソナル通信端末、あるいはマルチメディア関連などでも、LSI技術は重要なカギを握っているのである。

オーダーメイド
最終製品の企画構想段階から参加

 当社の仕事の特徴は、セット製品の企画構想段階から積極的に関わっていく点だろう。ユーザーの新製品開発のプランニングから参加し、LSI化すべき機能について綿密に検討する。単にユーザーから指示された仕様に基づいてLSIを設計するのではなく、LSI開発目標を設定することからスタートするわけである。一般に半導体設計会社は仕様決定後から担当するケースが多く、その意味でも他の設計会社とは一線を画しているといえよう。そのため、技術者は自分のアイデアによって機能やシステムを創り上げることができる。技術者としての達成感や満足感が感じられる創造的なフィールドが広がっているのである。

一人の技術者が全プロセスを担当

 当社ではタテ割りの一貫した開発体制を築いている。そのため技術者は、ユーザーとの製品開発に関する打ち合わせからコンセプト決定、設計、試験・評価、サポートに至るまでの一連のプロセスを自分の手で進めていく。大きな仕事でも担当するのは数名のチーム。通常は一人で全プロセスを任される。入社1年目にディスクマンのLSI設計を任された新人もいるのだ。また、企画から試作品完成までにかかる期間はおよそ半年から1年。開発が長期にわたるため、自分でスケジュールを組んで進めていくのである。

肩で風を切るエンジニアになれ

 技術者集団では、一人一人の社員のポテンシャルが会社の価値を決める大きな要素になる。新入社員から管理職までの研修プログラムのほか、入社3〜4年目の社員が新人とペアを組んで開発していく“チューター制度”も導入し、研修のための環境を充実させている。また、当社が掲げる技術者像は“肩で風を切るエンジニア”。ユーザーから頼りにされる技術者になれという意味である。どういう商品をつくるか、何を実現していくかといった意志や自己主張を持った技術者であってほしいと考えている。

ASIC、マイコン、CADが柱

 当社の技術を大まかに分けると、ASICなどのLSI設計、マイコンを中心としたアプリケーションシステムの設計、これらの技術ワークを支援するCAD環境の構築やコンピュータツールの開発、という3つに分類できる。どの分野の技術者もめざしているのは同じで、豊富に技術ノウハウを吸収し、プロフェッショナルとして存分に実力を発揮していくこと。そのため、必要な文献を自由に申請できるシステムを導入したり、外部のセミナーに自分の意志で参加したり、様々な援助を惜しみなく行っている。