エレベーターは様々な先端技術の集合体。感性まで取り入れて、人に優しい未来の空間移動システムを創造

 都市では超高層ビルが当たり前の存在とり、ビジネスや日常生活でも頻繁にエレベーターを利用するようになっています。また一方では1000メートルを超える超々高層ビルの建設構想もあり、ここではエレベーターの概念を超えたリニアモーターによる自走式の空間移動システムの登場が予測されています。当社は総合技術力を基盤に、人に優しい移動空間を創造していくエンジアリング企業。技術者の夢は限りなく広がっています。

“リニアモーターで動くエレベーター”は近い将来、確実に誕生する

 たとえば、建設省で打ち出している「ハイパービルディング構想」。これは、高さ1000メートル級の超々高層ビルを建設していこうという壮大な構想である。1000メートルという規模の建築物が実現すると、単にオフィス空間としての機能だけでなく、商業地、行政機関、居住地といった都市に必要なすべての機能を持たせることまで可能になる。ビルが一つの“都市”になってしまうのである。もちろん実現のためには、従来の技術の延長線上ではなく、新しい技術や素材、機器システムの開発が必要になってくる。そして、この構想の一端を担っているのが、エレベーターの技術である。
 現在、日本に存在する超高層ビルは300メートル以下。1000メートルの高さを上下移動するには、現在のロープ式のエレベーターでは、ロープそのものの重さに耐えられなくなる。そこで考えられているのが、ロープの代わりにシャフトを通し、リニアモーターで自走する未来型エレベーターの開発である。そうなると一本のシャフト上を何台ものエレベーターを走行させることも可能になるし、ビルとビルとの間を横に斜めにつなぐエレベーター路線も出てくるだろう。“エレベーター”という概念はすっかりなくなり、“新空間移動システム”とでも言うべきものへと進化していくに違いない。夢のような話ではあるが、すでにロープ式のエレベーターを動かすリニアモーターも開発されていて、あながち遠い未来の夢物語というわけでもなくなっている。未来の都市がカタチになる。そこではエレベーターの技術の進化が大きな役割を果たすのである。

エレベーターには、あらゆる分野の
技術やノウハウが集約されている

 普段何気なく利用しているエレベーターだが、その快適な動きの背景には高度な技術が存在している。当社は1983年、現在の主流であるVVVF(可変電圧可変周波数=Var-iable Voltage Variable Frequency)インバータ制御の高速ギヤレスエレベーターを世界で初めて開発。超高層ビルに利用される毎分300メートル以上の超高速エレベーターを誕生させた。主回路変換素子にはIGBT(絶縁バイポーラトランジスタ)素子を採用し、32ビットのマイクロプロセッサによって速度制御をはじめとするすべての制御系をデジタル化。高速性とともに、振動なども含めた快適な乗り心地も実現している。
 一方、大規模な建築物では数台のエレベーターをひとまとめにした群管理制御システムが主流になっている。各階のホールの待ち時間を予測演算し、待ち時間を短縮するように割り当てるだけでなく、最近ではAIやファジー制御、ニューラルネットワークといった先端技術が盛り込まれ、実際の重量・人数や行き先、時間帯といった細かい動きを学習して取り込む。集中的に利用された場合も動きを察知してエレベーターを回すという仕組みになっている。
 このほか、移送手段としての機能に加え、ビルの顔としてのデザイン性や居住性も求められるようになってきた。振動や騒音を遮断する技術、あるいは音声認識による行き先指示などもその一例だろう。エレベーターは社会の中で一般の人々に利用されるもの。“ヒューマンインテリジェンス”というコンセプトのもと、当社の技術力が人に優しい空間移動システムを形づくっていくのである。