新人が教室の運営責任者。
独自の“個別指導システム”をもとに、成長を続ける教育文化企業。

 同社は1984年の設立以来、独自に確立した「個別指導システム」によって、全国に展開を図っている企業。一人一人の生徒にマッチした学習計画づくり、きめ細かな指導によって高い評価を獲得している。すでに教室数は直営・FCを合わせて、700近くにも達している。今後は“総合教育文化企業”をめざして多角的な経営展開を図っていくとのこと。独創的な“システム”を持つだけに、将来が楽しみである。

当社の正社員には、
「講師」
という職種がありません。

 当社は教育事業、それも小・中学生から大学受験生までを対象とする「明光義塾」を全国に展開している企業である。日本国内には数多くの学習塾があるが、その中でもおそらく当社だけの特徴と思えるのが、設立からずっと、正社員のキャリアステップに「講師」という職種が存在していないことだろう。仕事は“室長”と呼ばれる各教室の運営責任者や、各地区グループのマネジャー、あるいは本部スタッフなどである。なぜ、仕事が「講師」ではないのか。その理由は、当社のオリジナリティあふれる事業形態にある。

1984年、個別指導をコンセプトに
教室の全国展開をスタート

 当社は1960年創業。塾運営に携わりながら、「子どもの学力や理解力は一人一人違うはず。集団授業方式で全員に対して同じ内容の指導をするのではなく、それぞれの生徒に対応した指導ができないだろうか」というテーマを追求し続けてきた。こうした発想を原点に、30年にわたる塾運営のノウハウの集大成として確立したのが、独自の“個別指導システム”である。この個別指導をコンセプトに、1984年には株式会社として新誕生。同時に直営・フランチャイズによる教室の全国展開をスタートした。以後、個別指導システムは、子どもたちの個性や学力を最大限に伸ばす指導方法として各方面から高い評価を獲得。設立以来、急ピッチで生徒数、教室数、売上高を拡大し、フランチャイズ展開を始めてから10年あまりの間に、直営教室72、全国フランチャイズ教室610をいう一大ネットへと成長を遂げてきたのである。

単純な授業の個別化ではなく、
今までにない“新形態”を完成

 当社の個別指導システムを簡単に紹介してみよう。一つの教室は1人の運営責任者と10人ほどの講師で構成されている。生徒は数10人から100人を超える規模。生徒1〜3人に講師が1人という割合でつき、家庭教師スタイルの授業を進めていく。また、講師は現役の大学生を採用し、本部で徹底した研修を行った上で配属。もちろん講師にも昇給などの待遇を設け、これをモラルアップにつなげていく。いわば大学生の“知識”に対し、当社のノウハウをプラスすることで、授業の質的向上を果たしているわけである。そして社員は教室の運営責任者や本部スタッフとして、講師、生徒、教室運営などのマネジメントとサポートを担当するのである。
 そもそも“個別指導”は、効果的・理想的な指導方法と言われてきたものの、実施に移せる企業は皆無に等しかった。というのも、単に授業の方式だけを“集合”から“個別”へと移行しても、採算の面で経営が成り立たないためである。当社では指導面だけでなく、教室運営に関わるすべてのシステムと、実際に各教室でのオペレーティングまで、一貫した新システムとして完成させている。理想の個別指導を実践する“仕組み”をつくり上げたわけである。

教務面、運営面の2つを任される、
事業所の運営管理スタッフである

 室長の業務は、大きく教務面、運営面の2つに分けられる。教務面で言えば、入塾や指導計画に関する父母への適切なコンサルティングから、指導効率、あるいは生徒一人一人の指導計画の立案、学習効果・成績の管理まで、広い範囲にわたっている。また、講師のスケジューリングやモラルアップも手がけ、ソフト面である指導内容の充実を図ることで、授業の価値を高めていく。一方、企業である以上、適切な収益も実現しなければならないから、運営面でのマネジメントも重要な要素になってくる。生徒獲得のための販促活動の推進、収支管理、売上管理なども室長の役割である。
 教室運営に際しては当社の基本コンセプト、基本的なオペレーティングシステムに沿ったマニュアルがあり、これをベースに進めていく。他塾との地域内での競合、地域特性に対応した運営など、各自が戦略を持った運営を行っていくことになる。このほか、各地区グループや本部での会議、報告会などもあり、より効果的・効率的な教室運営についてのアドバイスや情報を受けながら、運営面に生かしていく。いわば当社の教室は一つの事業所であり、室長は事業所の責任者として運営を任されるのである。

学習計画づくりから成績管理までを支援する先進コンピュータシステム

 室長にとって強い味方になっているのが、CMI(Computer Manage-ment Instroduction)と呼ばれる学習計画支援・管理プログラムである。これは当社が独自に開発したもの。出欠・成績の管理が主体にした一般のCMIとは概念が異なり、生徒一人一人に対応した学習計画づくりから学習管理まで、幅広い業務を強力にバックアップしている。個別指導では、CMIの中には、およそ900種類の標準的な学習計画プログラムがあり、これを柔軟にカスタマイズしてする形で、一人一人の生徒の学力に合わせた最適の年間学習計画をつくり上げていく。ここで策定された計画に基づいて講師が指導をしていくわけである。また、その後は学習管理プログラムとしてフルに活用。教室では毎時間、生徒のレベルに応じた理解度を見るテストを行っているが、本部のホストと教室とをオンラインで結んでいるため、教室側のパソコン端末で適切なテストを引き出して実施することができる。個別指導をトータルに支援する統括的なオンライン情報ネットワークシステムなのである。

室長として経験を積んだ後は、
本部スタッフなどへキャリアアップ

 新入社員は入社後、2カ月間の基本研修を受け、室長として直営教室に配属される。その後は、教室での実践教育を主体に知識を吸収。社外研修、フォロー研修などを行いながら、教室運営についての能力を高めていく。このほか、先輩社員が新人の公私両面にわたってアドバイスしていくインター制度も導入し、よりスムーズな能力開発を実現している。
室長として経験を積んだ後は、直営教室のグループ長や、FC開発部・FC営業部などの本部スタッフへとキャリアアップしていく。

努力と成果を細かく見つめ、
実力主義の人事考課を実施

 当社は株式会社として設立してから、今年で12年目を迎える新しい会社。20代の社員も多く、各部門のリーダーも若い。新しい会社にふさわしく、人事考課も実力と実績を正当に評価するポリシーが貫かれている。
とくに教室運営については、学習効果や指導の質的なレベル、あるいは授業の効率、教材・テストを含めた売り上げ、生徒数や一人当たりの単価などまで、教務面・運営面のバランスを考え、細部にわたって多角的に評価していく。また、毎月の目標達成、春・夏・冬の期別講習の目標達成などを、各地区グループ単位で表彰する報奨制度もあり、努力と成果に対して適切な利益還元を実施している。

積極的に新規の教室を開設、
そして教育文化に関する総合企業をめざす

 教育産業界では若年層の人口減少による生徒数の減少が叫ばれているが、逆に子ども一人当たりにかけられる教育費が反比例して伸びているの事実である。教育産業の市場規模は縮小することなく、その代わりに質の良いもの、ほかにはない付加価値を持ったものが求めらていくだろう。その意味でも当社の個別指導には根強い支持を受けている。そして何よりも、当社の歴史はまだまだ始まったばかり。当社自身も需要を十分に掘り起こしているとはいえない。当面は第一ステップとして、フランチャイズ教室1000、直営教室100という規模にまで事業を拡大していく計画である。また、オリジナル教材編集のほか、刊行物、ビデオなどの制作・出版にも関わっている。教育・学習に関する出版事業もさらに幅広く進めていく。さらに、これまで培ってきたノウハウをもとに、今後は生涯学習や生涯教育にまで活動領域を拡大。幼児からシルバー層までをターゲットにした“総合教育文化産業”への進展をめざしていく。